第一章 括り 胡蝶夢



きっと迎えにいくわ。

今度こそ、”しあわせ”になりましょう。









ヒラリヒラリ・・・・・・


浅紅色の蝶が、緩やかに舞い降りる。





長い、夢を見ていた心持がする。

夢うつつに、あの人の優しい声を聞いた。



あれは、夢だったの?

胡蝶が見せた、鮮やかな幻だった?


それなら、もう一度、長い夢を見せて。

永遠に醒めない、あの日の夢を見せて。




「おい、寝ているのか?」

「今ね・・・・・・遠い日のことを、思い出していたの」

「日向村の・・・・・・あの男のことか?」

「それは、秘密」



旅に出ましょう。

長い長い、独りぼっちの旅に。


何処まで行ったら辿り着くの?

果てなんて見えない。



「ささら・・・・・・傷は、まだ癒えないか?」

「さぁ、どうかしら?

でも、あなたと共有した時間は、ずっと・・・・・・ずっと宝物よ」



だけどね、私は行くわ。



懐かしい郷愁を求めて。

もう帰れない、あの日を取り戻すために。


私が。

あなたが。

幸せに、なるために。




「ねぇ、幸せって・・・・・・何なのかな」




私は、夢を永遠にする。



たとえそれが、血塗られた終焉でも。









                                 第一章 完



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