茜色の空が好きだった。
家路へ急ぐ、鳥の唄が好きだった。
「ただいま」と髪を撫でる、暖かい手が好きだった。
でも今は、
振り返ってもあなたはいない。
もう二度と、あの声を聴くこともない。
愛していたのに・・・・・・
今はもう、朽ち果てた景色。
多くを望んだわけじゃない。
なのに、なぜ?
人はなぜ殺し、なぜ「死」に哀しむのですか?
小さな幸福を手にしても飽き足らず、なぜ奪い合うのですか?
誰に問うたら解かるのでしょう。
”ダレカ、タスケテ”
しんしん、しんしん
今日もまた、雪が降り積もっています。
まるで、穢れた世界が泣いているようです。
わたしと、同じ。
でもわたしは、
泣くことを忘れました。
笑うことを忘れました。
信じることを忘れました。
夢を見ることさえも、いつしか諦めてしまいました。
ただ静かに、この胸の痛みが癒える日を、待ち続けていました。
世界の真実に気が付くまでは。
待っているだけは、何も始まらない。
わたし以外は、誰もわたしを救えない。
だから、さぁ、行きましょう。
深雪を踏み分けて。
たとえそれが、
「犠牲」いう名の終焉であっても、
私は決して悔やみはしないでしょう。
そう、だって、
もう何も、惜しむものなどないのだから。
この世界は、輝くものではなかったのだから。
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