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雪が降っていた。夜に、真っ白で穢れなき雪が――姫巫女の歌と共に。
「綺麗な歌……」
「歌? 何を寝ぼけてるんだい?」
「昔、この地にいたって言う姫巫女の歌じゃないかな。
澄んでいて、消え去りそうなくらいどこまでも澄み渡る声で、でも力強くて哀しい」
そう言ったのは一人の少女だ。名を紅と言った。
彼女の母親は呆れ顔でため息を吐くと、彼女の言葉を鼻で笑った。
「聞えないねえ。大体、ここが都からどれくらい離れてるか分かって言ってんのかい?」
「分かってるよ。けどさ、けど、聞えたんだよ。絶対姫巫女様の歌だって」
「ばかを言うのはお止めよ。不吉な」
「お母さん、でもね、絶対この声は姫巫女様の歌だよ。
この歌は、この声は、姫巫女様のものだよ。」
真剣な眼差しで言う彼女に嘘も悪意もない。
母親は困ったように唸ると、くすっと笑みをこぼした。
「姫巫女様はね、世界を呪ってるんだよ。
人も、竜神も、世界さえも拒んで、今も彼女が心を寄せるのはただ一人、亡くなった夫だけっていうじゃないか。
これは、夫を殺した相手に対する呪いの歌だって、誰もが言ってるよ」
すこしばかりからかうつもりで言ったのだが、その一言が少女の怒りをかった。
少女は母親をにらみあげると、小さく舌打ちをして外へと飛び出した。
彼女が向かった先は、真っ白に降り積もる雪野原。
遊びのためのそりを使って、一気に下までたどり着いた。
小さな小さな、白銀の粒で作られた岡。
遥か先を見つめると、山から顔を覗かせた夕陽がまぶしかった。
(こんな綺麗な景色を、あんなに哀しくてやさしい歌を歌っている巫女様が嫌うのかな?)
不意に零れだす涙を、少女は手で拭った。
「何でだろう……まだ響くの、歌が……心の中で、外で、耳で」
溢れ出て止まらない雫を頬に伝わせながら少女は呟いた。
「愛する人を思う、姫巫女様の歌が――」
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【10000ヒット記念 短編小説】 present from 樋口里亜
1万HITのお祝いに、樋口里亜さまがくださいました!!
浮かんでくる情景が、すごく綺麗ですよねぇ♪
私には、ここまで上手な描写は出来ません(^^;)
紅ちゃんは、姫巫女の歌が聞こえる・・・これは、新キャラにしないと!(笑) |
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「窓から綺麗な天の川が見えるよ
星が瞬いてまるで 綺麗な音を奏でているようだな」
瑞貴はたしか、こういっていた
どこからか笛の音が聞こえる
瑞貴?
そんなはずないよね だって、瑞貴は・・・・・・・・
外に出て井戸の前に立つ
「ささら、きれいだな」
「瑞貴?」
瑞貴の声が聞こえた ささらは身をのりだす
「見ろよ 綺麗だぞ ささら」
「瑞貴 無理だよ・・私には、見えない」
ささらは涙ぐんだ 思わず目が開く
うそ・・・ほんとに瑞貴・・ううん
ほんとじゃなくても・・瑞貴だよね
「ささら、目を閉じて?」
「え?」
「見せてあげる」
ささらは目を閉じる
「わあっ」
うそかもしれないけど、目が見える!
綺麗な天の川 ほんとに音を奏でているみたい
「ありがとう・・・・・」
すぐ見えなくなってしまったけど たった一瞬の輝きだったけど・・・・
わすれないよ 瑞貴 わたしは・・ずっと・・・・・
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【七夕の番外編小説】 present from 蔦紅葉キセキ
七夕の番外編を基にした、雪夜の短編です。
瑞貴が普段より男らしくて、包容力があって素敵ですっ(笑)
本物の瑞貴も、こんな風に成長させてあげたいところ。
ささらも女の子らしくて可愛いです。キャラの特徴を捉えてくださっていて、
何より私のチンケな番外編を綺麗にしてくださって嬉しかったです! |
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