「雛菊生徒会長の波乱」の台本を公開します。
実際に使った台本に動作や心内だけを加え、小説に改正したものです。
水瀬視点で、本編よりあほらしい物になっておりますが・・・
ドラマを聴きながらご覧ください!!
注意 : 本編とは一切関係ないパロディです。
私の名前は、水瀬と言う。 良家のご息女、雛菊お嬢様の敏腕ボディーガードだ。 主な仕事は、お嬢様のお世話と学校までの送り迎え。 愛車は、丹念に磨き上げたリムジン、キャデラック・ドゥビル(全長7.0メートル) さて、と・・・そろそろ目的地に到着だ。 交差点から小道に入り、ゆっくりとブレーキを踏んだ。 「学園に到着しましたよ、お嬢様。」 私はそう声を掛けて、扉を開いた。 お嬢様は座席にちょこんと座り、桃色の髪にブラシを通している。 「うんっ、ありがと、水瀬!」 なんて・・・なんて愛らしいんだ、お嬢様!! シルクのハンカチで滴る血を拭い、そっと手を差し伸べる。 すると、リボンの付いたエナメルの靴を履き、私の手を取って地面へと降りた。 雛菊お嬢様選手、着地、10点満点です・・・!!(拍手) 「本日のスケジュールを復唱しますか?」 我がお嬢様は、この雪夜学園の生徒会長を勤めている。 才気あふれる雛菊お嬢様には、ぴったりの役どころと言えるだろう。 「ううん、雛、ちゃんと覚えてるもん。今日はねぇ、学園の視察の日っ!」 さすが、私がお育てしたお嬢様・・・!! チマチマと隣を歩く姿には、聡明さと気品が溢れている。 「ええ。それでは、参りましょう。」 二人並んで、校門をくぐる。 こうして、雛菊お嬢様の学園視察の1日は始まりました。 「雪夜の姫巫女一周年念記念企画。番外編『雛菊生徒会長の波乱』」 8時10分。 大勢の生徒が登校して、陽気に挨拶を交わしている。 すると、何やら賑やかな様子で、2つの影が雛菊お嬢様の元へ・・・ 「おはようございまーす!」 あぁ、この子達は・・・1年の双子か。 姿形はそっくりだが、あまりに対照的な性格だと有名だ。 「おはよう、ござい・・・ます、雛菊生徒会長。」 オドオドとした様子で、妹の方も挨拶をしてくる。 なんとまぁ、引っ込み思案な物言いだろう・・・これでは、お嬢様の教育に毒だ。 慈愛に満ちたお嬢様に代わり、私がしっかり風紀を正さねば・・・ 「君、挨拶はもっとはっきりと。ついでにその茶髪は校則違反です。」 私の問いかけに、ビクリと肩が大きく震えだす。 そして、制服のスカートの裾を握り締めて、双子妹はポツリと呟いた。 「でも、あの・・・会長さんも、髪の色ピンク・・・」 「雛はいいのっ、一番偉いんだもん!」 か弱い声をさえぎり、お嬢様が飛び出す。 自慢の桃色の髪を指摘され、少しばかり不機嫌な様子だ。 「・・・ねぇ、お揃いのピンクにしよ〜っ?!」 双子達の表情が、あっという間に青褪めていく。 自分達のお団子頭が、蛍光ピンクになった図を想像したらしい。 「じょ、冗談じゃないわよぉぉっ!!」 姉の方がいち早く危機を感じ、大慌てで逃げ出す。 彼女は万年リレーの選手を務めるほど足が速く、あっという間に米粒大に。 それに比べて・・・ 「ま、待ってよぉ、琴音ちゃんっ・・・鈴音も逃げるよっ・・・」 妹の方は、哀れなほどに鈍い。 ヨタヨタと歩くように駆け出しては、つまづき、また走る。 お嬢様はそんな様子を見逃さず、双子妹めがけて一気にダイブししがみ付いた。 「ひぃっ」 雛菊お嬢様は、身長121センチ(伸び盛り) その小さな体のどこに隠れているのか、強靭な跳躍力を誇っている。 見事な飛び込み、そしてダッコちゃんさながらの素晴らしい引っ付き具合だ。 「きゃははっ、つーかーまーえーたぁっ!雛、はやーい♪」 ・・・ダッコちゃん、か。 こんなダッコちゃんが販売されたら、部屋を埋め尽くすほど買い貯めるが・・・ いやいや、そんなことを言ってる場合じゃない。 「ピ、ピンク・・・や、やだよぅ〜〜・・・助けてぇっ・・・」 彼女は、ピンク色をよほど恐れているらしい。 雁字搦めになって捕獲されてもなお、ジタバタと暴れ続けている。 「生徒会長!」 ん? 何だコイツは・・・妙にキラキラしている。 「僕達は授業がありますので、これで。鈴音ちゃん、大丈夫?」 この野郎、お嬢様の邪魔をしやがって!! これだから王子タイプの人間は嫌だ、スポットライトを独り占めだ。 雛菊お嬢様に歯向かうとどうなるか・・・後でじっくり、教えてあげましょう。 「あ、ありがとう、広夜くん」 潤んだ眼差しを向けて、双子妹はお礼を述べている。 しかし・・・ 「・・・・・・あ!」 次の瞬間には、顔が真っ赤になっていった。 おおっ、これぞリンゴ病・・・いやいや、一体、何があったと言うんだ・・・? 「・・・あの、ズボンから、しっぽ出てるよ・・・?」 は? 「え?」 少年の尾部をよく見ると、銀茶の毛皮が垂れている。 毛並みは艶やかこの上なく、フサフサしていて、まるで狐のようだ。 「我が学園では、毛皮の着用は認めていません。生徒指導室へ連れて行きましょう。」 尻尾など生やして、勉学への意欲が感じられない。 これでは、雛菊お嬢様の治める学園の名に傷が付くではないか!! 即刻引っぺがしてやらないと・・・ 「あの、これは僕のっ・・・」 尻尾をつかもうとすると、少年はそれを慌てて回避した。 すると、我がお嬢様は・・・ 「わぁーいっ、狐のしっぽだぁっ、可愛いねぇー!!こんこんこーん。」 な、なんて可愛らしいんだ・・・!! お嬢様の狐のマネは最高だ、キタキツネ牧場なんぞに負けるか! 「わっ、ちょ、やめて下さいっ・・・さ、触らないでっ・・・うわあああぁ!!」 飽きるまで撫で繰り回され、少年は屍のように生気が無い。 サラサラだった尻尾は、毛がほつれ、ヨレヨレの無残な姿になっている。 ごめんよ、哀れな少年。 保健室へ連れて行ってやるからなッ・・・!! 終業のチャイムが鳴った。 授業中とは違い、構内がだんだんと騒がしくなってくる。 ん? 何だこの煙は・・・しかも、酒臭いぞ?! 「おい!」 ど、どこからどう見ても中学生じゃない・・・ 酒ビンを片手に、ドッカリと廊下に座り込み、タバコの煙で輪を作っている。 「陽、タバコが切れた。買って来い。」 何だその派手な金髪は、肌蹴たワイシャツは! しかも、その右肩には『我命在限笹羅愛』と刺青が・・・ふ、不良だー!! 「はぁ?!何で、俺がっ・・・焔が勝手にいけば?」 そうだ、金髪少年っ・・・『NO』と言える大人になれ!! 「ほーう・・・後輩の分際で、この先輩様にたてつこうとは、いい度胸だ。」 そう言って男は、握りつぶした空箱を少年めがけて放り投げた。 少年はそれを余裕で避けて、拳を握り締める。 「飲酒、喫煙、かつ上げ、カンニング。おまけに赤点常習犯の留年野郎は威張らないでくれる?!」 な、何だ、その余罪の多さは!! こんな不良が、お嬢様の学園にいるなんて・・・さっさと退学にしなければ。 「あぁ?!この野郎!!」 「下克上だっ、中学生なめんなよーっ!!」 廊下に、殴りあう鈍い音が響く。 2人は周りの迷惑お構いなしで、熾烈な争いを繰り広げている。 「お嬢様、喧嘩です。ここは生徒会長らしく・・・」 「よぉーしっ」 いつになくやる気だ、雛菊お嬢様!! 頑張れ、雛菊お嬢様!!負けるな、雛菊お嬢様!! 「雛もやるー!!」 ・・・あれ? 「ごほっ・・・あの・・・そうではなくて」 生徒会長なら、暴力は駄目だと言うものでは・・・? な、ナイスなボケだ!!! 「んっとー・・・じゃぁ、勝った人に、雛のお昼の焼きそばパンあげるっ!!」 ・・・ほ、ほしい!! よし、私も彼らに混じって拳の勝負で焼きそばパ・・・いや、ここは冷静にならなくては。 「いや・・・それもどうかと・・・」 そうだ、それでいい、水瀬。 私は雛菊お嬢様のボディーガード、いつも真摯な対応をせねば。 「ふぇ?水瀬は焼きそばパン、やなの?じゃぁねじゃぁね・・・」 必死で考えるお姿が、なんて聡明なんだ。 ロダンの銅像「考える人」なんか、お嬢様の目じゃないぞ?! 「いいえ、好物ですけども・・・まったく仕方ないね、雛菊は。」 「えへへっ・・・ふぁ・・・雛、眠くなっちゃった。ねぇ、もう、お家帰ろ?」 アクビを隠す小さな手。 お嬢様はうとうとした様子で、ぺたんとしゃがみ込む。 「あぁ・・・」 腕の時計は、午後3時を回っている。 普段なら、純白のレースのパジャマを着て、手にはテディベアを・・・ 「普段ならもう昼寝の時間だからね。」 「きゃははっ、水瀬おんぶー!!」 お嬢様は屈託無く笑い、私の背中に飛びつく。 私は幸せです、雛菊お嬢様!! 「分かってるよ、おいで。」 さぁて、安全運転でお邸に帰らねば。 愛車キャデラック(以下略)にキーを差し込み、アクセルをいっぱいに踏む。 任務を完璧に遂行され、今日もご立派でしたね。 ご苦労様、今は夢の中のお嬢様。 一方、暴君が去った構内では・・・ 「広夜くん・・・今日一日、疲れたね・・・」 「次の選挙では、もっと普通の生徒会長を選ぼうね・・・」 「って言うか、あいつ選んだの誰。」 「絶対コネよ、コネ!」 全員の顔には、疲労感がにじみ出ていました。 荒みきった生徒達は、ぐったりと肩を落とし帰宅していきました。 「こうして、雪夜学園の嵐のような一日は幕を閉じたのでした。」 * --------------------------------------------------------------------------- * 執筆後記 書いている間は、物凄く楽しい台本でした。 雪夜の世界の枠を飛び越えて、現代の中学生に・・・ セーラー服を着た双子や、刺青をしたタバコ男(もとい焔)の姿が脳内で動くんです。 酒瓶片手にタバコを噴かす焔が真っ先に浮かび、一人で爆笑しました。 ただ、いざ配布となると話は別でした(^^;) 「何このくっだらないの!誰が収録するか!!」と言われるんじゃないかと。 そのくらい、私の中では恥ずかしく、異色な物でした。 そもそも、私は大阪出身ですが、笑いのセンスが限りなく乏しいのです(涙) アンケートで「コメディ番外編」と出た時、「やったるわー!!」と思ったのが無謀の始まり。 配布後は、ヒヤヒヤ続き。 キャスト様から温かい言葉をかけて頂いた時は、思わず涙ぐんだ程です。 本当に素敵なお声をありがとうございました! まさか、シリアス企画でこんな物を収録するとは思いもしなかったでしょう(汗) ですが、皆さんノリ良く演じてくださり、加えてアドリブが輝いていました。 視聴者の皆さまにも、番外編を堪能して頂けると嬉しいです!! 台本を小説に興すにあたり、誰の視点にしようか考えました。 でもよくよく見れば、どの場面でも水瀬が一番仕切っていたので、ほどなく決定。 ただ、、焔と違い、彼はボケキャラ要員ではありません。 そして悩んだ挙句、せっかくの機会なので、思いっきりキャラ崩しに挑戦しました。 ・・・なんだか、ロリコンの怪しい風格が出てビックリ(爆笑) 素敵なお声とのギャップがありすぎて、途中「やっちまった」と自責の念が・・・ まぁ、これっきりの設定ですし、アリかなとv あくまでフィクションとして、本編と混同せずにご覧くださいね!!!! 本編の水瀬がロリコンだと思われたら困ります〜〜っ・・・ 此処まで読んでくださった皆さま、ありがとうございました!! 幸村希月 |